人生で初めて、メイドカフェに行ってきた。
前々から行ってみたいとは思ってたけど、1人で行くにはハードルが高くて行けずにいた。
そんな中、久しぶりに会う友達と一緒に行こうって話になったので、行ってきた。
入ると、お店にいるメイドさん全員が「おかえりなさいませ、勇者さま」って迎えてくれて、壮観だった。
メニュー表にはちゃんと、お店の設定というか説明が書かれていて、世界観が確かにあった。
結果的に4時間くらい、お店にいた。
その間、基本的に目の前にはメイドさんが誰かしらいて、入れ替わり立ち代わりに話しかけてきてくれる。
そこでは僕たちは、地下に閉じ込められた人形 (メイドさん)を助けにきた勇者さま。
周りの勇者たちも、メイドさんとのお喋りととても楽しんでいる。
そこに乗っかって、状況を思いっきり楽しめるのがいちばんだと思う。
ただ、これが自分の良くないところで、どうしても恥ずかしさが先行するあまり、なかなかその状況に乗り切れない。
これは、みんな本当に自分たちを人形と、勇者だと思っているのか、なんて、疑ってしまう悪い癖も出てくる。
それゆえ素の人間らしさが垣間見えたりしないものかと、店内を色々と見渡してみる。
でも、注文したオムライスを作ってくれているのも、キッチン担当の別スタッフとかではなく、さっきまでお客さんと会話を楽しんでいたメイドさん。
それをテーブルまで持ってきて、ケチャップで絵を書いてくれるメイドさんと、確かに同じ世界観に存在していた。
空いたグラスを見て「何か飲みますか?」と声を掛けてくれるメイドさんも、確かに同じ世界観に生きる人物だった。
わりと終盤、一緒に写真を撮りたいメイドさんを指名して、ツーショットを撮れるみたいだった。
2回撮れるみたいだったので、ずっと席の近くにいてくれたメイドさんと、オムライスを作ってくれたメイドさんを指名した。
メイドカフェでは王道の、2人でハートを作るポーズと、見つめ合うポーズをそれぞれやってもらった。
見つめ合うポーズの方は正直、メイドさんの目力に圧倒されて、1秒も見ることができなかった。
しかし勇者としては、写真を2回撮るにしても別のメイドさんを指名する行為は「ない」らしい。
推しを決めて筋を通す、それが勇者。
恥ずかしさが先行するゆえ、完全にはその世界観に乗り切れていない分、どこかに現実を探そうとするような視点のまま4時間くらい、お店にいた。
地下のお店に入ってから、そこには現実を感じる欠片が少しも落ちていなかったように思う。
トイレなんてなくて、似たような形をしたそれは「教会」だったし。
この、普段の自分が生きてる現実とはまるで違う、別世界を覗いた感覚は過去にもどこかで経験したことがあると思ったら、それはディズニーランドだった。
日常とは何もかもが違う、まさに非日常。
夢の国なんてよく言われるけど、その現実味のなさに夢を見てるかのような感覚に陥る。
「あれ、これって現実だよね?」と、その中で生活感みたいなものを探そうとするも、ひとつも落ちていない。
完全に非日常を感じさせる空間に、足掻くって表現は変かもしれないけど、そうしてみても、どこまで行っても別次元だった。
メイドさんの圧倒的ホスピタリティも相まって、とても感服した。
一緒に行った友達が、12万円 (この世界では120,000Gと表記する)のボトルを入れていて、驚いたけど、中身を注いでもらってメイドさんと乾杯をした。
それは、ぬるい水だった。
正確には水だけど、水じゃなかった。
ただの水を、ただの水たらしめないのが、メイドさんが提供してくれた圧倒的価値ということだった。
お客さんが買ってるのは、商品それ自体じゃなくて、その先にある価値なんだ。
みたいな、ビジネス的な学びを急に感じる瞬間もあって、あわせて感服した。
長々と書いてきたけど、ひとことで言うなら、すごく楽しかった。
この非日常感に、通いたくなる人の気持ちもわかった。
メイドさんにもシフト (この世界ではお給仕の時間という)があるから、僕らが4時間もお店にいる間にも、何度か入れ替わりのタイミングがあった。
それまで着ていたメイド服から私服に着替えて、じゃあまたと手を振るメイドさんたち。
私服に着替えて、階段を上がって秋葉原の街に出て行くメイドさんたち。
さっきまでお給仕をしていたメイドさんたちが、普通の女の子に戻っていくその瞬間。
そこには、なんだか不思議と思うことがあった。なんとなく、ああ、なるほど、とも思った。
メイドさん”だった”時間とのギャップを感じる人もいれば、そのままの印象の人もいた。
ただ、今回行ったお店では、メイドさんたちが私服でお給仕をする、いわゆる「私服デー」が不定期に開催されているらしい。
そこまで含めて、完璧なのかと思った。
あれは完全に非日常で、昨日の4時間、僕はずっと勇者さまだった。
いわはし
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