この騒がしさが欲しかった。無国籍感漂う名作、doubletのカオス刺繍スカジャン

寒い冬がようやく終わりそうですね。

秋冬ってどうしても、他の季節以上に暗い色味の洋服ばかり着てしまいます。

 

その反動から、ようやく春の兆しを感じられるようになってきた2月や3月になると、派手な色や柄の洋服を探しがち。

ようやく心地良く過ごせる季節がやってくる。

その喜びから、例えば去年なんかはオレンジ色のパーカーに手を出したり、派手なKENZOのキャップを被ってみたり。

 

冬の終わりから春にかけて一過性のマイブームだったりするのですが、今回購入した1着はそんな気持ちで買ったものではなく。

年単位で長らく探し続けていた、スカジャンというアイテム。

数多くそれらの中でも、理想と言える色や柄、雰囲気を持った1着にようやく巡り会うことができました。

 

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話題のブランド、doubletの名作「CHAOS SOUVENIR JACKET」

今、間違いなく日本で最も勢いのあるブランド。

世界的に見ても、もしかしたら最も注目されているブランドなのかもしれません。

 

2018年、LVMHプライズのグランプリを日本人で初めて受賞したデザイナー、井野将之さんによるブランド「doublet」

LVMHプライズとは、すごく簡単に説明するとLOUIS VUITTONやCELINEをはじめとした世界のトップブランドを抱えるグループが年に1回開催する、若手デザイナー向けコンテスト。

 

世界中からとんでもないデザインセンスを持ったデザイナーと、そのブランドがエントリーすることで開催されれば必ず話題を呼んでいます。

2017年には同じく日本のブランド、FACETASMがファイナリストまで残りましたが、惜しくもグランプリには選ばれず。

そんな中、日本人で初めて世界の頂点に立ったのが、このdoublet (ダブレット)というブランドなのでした。

 

doubletが2017年の春夏コレクションで発表した「CHAOS SOUVENIR JACKET」

いわゆるスカジャンなのですが、そのデザインは計算された美しさの中に、これでもかとマキシマムな背景が詰め込まれたもの。

 

かれこれ何年かスカジャンを探し続けていたぼくは、ヴィンテージやブランドを問わず色々なものに目を通していて。

その結果、名の通りにカオスなこの1着に心を射止められました。

 

doubletのアイテムには元々、首元に異様なまでに長いブランドタグが付いています。

切らない人も多いですが、そこには切ることを勧めるハサミマークもプリントされていて。

 

過去のアイテムなので新品で購入できるはずがなく、ブランド古着で購入したぼくのそれも、長すぎるタグは切り取られていました。

なのでネット上にある、切り取られた部分のタグに記されていた言葉を引用しておきたいと思います。

【CHAOS SOUVENIR JACKET】

ヴィンテージのスーベニアジャケットを再解釈したデザイン。

ヴィンテージ生地を再現したレーヨンサテンを使用し、スカル・蛇・蜘蛛の巣の和柄、虎、フィリピンの海辺、1980年代のスーベニアミリタリーモチーフの刺繍を重ねた、どこの国のお土産 (スーベニア) なのかわからないカオスな表情の新しい図案にしています。

刺繍糸も光沢のあるレーヨン糸、毛羽感のあるアクリルウールの糸、マットなポリエステルの糸をモチーフにより使い分けることによって光沢の濃淡や糸の太綱により、立体的に見えるようにしています。

レトロスポーツブルゾンのようなリブの配色や袖の白ラインによって、ハード感を抑え、スポーティーな印象を強めています。

・・・と、こういった説明が英語と日本語で書かれており、その下に選択表記が記載されていたりと、いわゆる内タグは異様に長く、ここに関してまで独特のデザインなっている。

 

まず目を惹かれるのは背中の”カオス刺繍”

何と言っても、まず最初に目を惹かれるのは名前の通りに施された非常にマキシマムかつカオスな刺繍。

そもそも”スーベニアジャケット”とは、外国の軍人が着ていたジャケットやブルゾンに、日本人が刺繍を施してあげていたことが歴史の始まり。

 

そこから外国の方々にも馴染みのある形であるベースボールジャケットをベースに、刺繍を施したものを売るようになり、それを今では”スカジャン”と呼んでいます。

諸説ありますが、その文化は横須賀から始まった為、横須賀ジャンパーの略でスカジャンと呼ぶという話も。

よく「Janpan」と大きく刺繍が施されたスカジャンを見かけると思いますが、あれはスーベニア (お土産)だからこそ、そういったデザインになっていたんですね。

 

なので普通はどこの国のお土産かを分かりやすくするものですが、doubletがリリースしたこちらのスカジャンには色々な国のモチーフが刺繍で施されている。

まるで元々無地のベースボールジャケットを持っていた人が、色々な国へ行くにつれて、その先々で刺繍を施してもらっていたらこうなった、とでも言うようなデザイン。

 

中央に大きく施されている虎や蛇、蜘蛛の巣に関しては日本でよく見かける代表的なモチーフ。

周辺に生い茂る椰子の木や、様々な国名がこのアイテムに無国籍感を与えています。

 

ジャケットの背中に刺繍をほどしたアイテムとして、似たものに”ツアージャケット”が存在します。

これは巡った国々の国名を刺繍で施したジャケットのこと。

そんなディテールも垣間見えています。

 

非常にクオリティーの高い刺繍が施されるにあたっては、日本ならではの職人技術が炸裂しています。

スカジャンの発端に深く関わっているブランドとして”東洋エンタープライズ”が有名ですが、こちらは一体どんなメーカーが施したものなのでしょうか。

 

虎が持つ体の模様を形成するにしても、生地の黒色を生かすのではなく、しっかり黒色の糸を使って刺繍が施されていたりして。

細部に至るまで、極上の技術が際立つ1着になっています。

 

この立体感と迫力。

ヴィンテージのスカジャンはヨレた雰囲気が格好良かったりしますが、こうして光沢のある糸で施された立体感の際立つ刺繍にもまた違った魅力がある。

doubletが今を輝く最先端のブランドであることを感じます。

 

特に見惚れてしまうのは蛇腹の立体感。

不気味で毒々しい見た目の刺繍、たまらないですね。

 

フロントにも無国籍感の漂う刺繍、有り

フロントには、一見シンプルに見えるけれど、こちらも実は様々な文化の背景がごっちゃになっているカオスな刺繍が施されていて。

本来なら虎だけでも十分ですが、そこに椰子の木、スカル。

本当の意味でのスカジャンは名前まで刺繍で施したお土産の意味もあったので、こちらはBobさんへ向けた刺繍だったのでしょう。

 

「名前を縫ってあげるよ」となったとき、聞こえたままに”バブ”と施してしまった様子。

本物のヴィンテージとなれば本当にそんな歴史も残っているようですが、そこに関してもオマージュされています。

 

こうして記事を書きながら見ても、やっぱりカオス。

「CHAOS SOUVENIR JACKET」なんて名前ですが、それがとてもよく似合っているなと思います。

 

レーヨンサテンのボディに、ジップは”あえての”YKK?

スカジャンのボディにも種類はいくつかありますが、大きく分けると”サテン”と”別珍”と呼ばれるものがあり。

別珍とはコットンやポリエステルの糸を起毛させて織ったもので、裏地には綿が詰められていたりすることもあり、やや厚手のアイテムも多いもの。

 

一方でサテン生地は”しゅす織り”と呼ばれる方法で織られた、軽くて柔らかく光沢のある生地感が特徴的な生地を指します。

サテンは引っかかりに弱くデリケートなので、少し慎重に着なければいけないかもしれません。

 

ジップにはYKKが採用されています。

ぼくはボタンやジップをはじめとした細かいディテールには強いこだわりがあって。

 

実はこちらのスカジャンは少し前からずっと欲しいと思っていたんです。

しかし、いくらdoubletのスカジャンとはいえYKKの安っぽい見た目をしたジップが使われていることに抵抗があり、しばらく買うか悩んでいました。

 

届いた現物のジップを引いてみると、見た目から想像していたよりは重厚感のある使い心地。

それから全体を見てみると、白や黄色のラインで切り替えられたレーヨンサテンのボディが持つ雰囲気には、もしかしたらこれが最適な選択だったのではないか、とも思ったり。

 

あえてチープな雰囲気を出したくてYKKのジップを採用したのか。

doubletというブランドのアイテムであるからには、そんな部分まで深読みしたくなってしまいます。

 

春に1枚でサラッと着たい、やや大きめな作りとサイズ感

身長178cm、体重64kgのぼくでMサイズを購入しました。

長袖Tシャツ1枚の上にサラッと羽織ってみると、袖にたっぷりクッションができる程には生地が余ります。

 

特にサテン生地のスカジャン全体に言えることですが、サイズ表記よりもやや余裕のある作りになっている気がして。

doubletのスカジャンに関しても、全体的に他のブランドで言うならLサイズ相当の大きさをしている気がします。

 

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早く暖かくなって欲しいと思わせてくれる極上品

ド迫力の刺繍が施されたスカジャンは、大人しい雰囲気のアイテムばかり着ていた冬を抜けた先に1枚でサラッと着たい。

ぼくは恐らく、タトゥーに対するちょっとした憧れのようなものがあるんだと思います。

 

ただ、自分で入れる勇気は全くない。

だからこそ、スカジャンをはじめとしたド迫力の刺繍がボディに施されている洋服を好んでいるのかもしれません。

 

自分にはできないことだけれど、洋服を通じてそれを疑似体験したいというか。

刺繍アイテムが好きな背景には、そんな気持ちがある気がしています。

 

早く暖かくなって欲しい。

それで、このスカジャンを1枚でサラッと着て、どこかへ出掛けたい。

心の底からそんなことを思わせてくれる極上の1着、手に入れました。

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いわはし

いわはし

もうすぐ30歳になるので、うかうかしていられません。

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