ファッションブランドのサンプルセールに参加して感じた、アパレル業界の大不況


先日、なんと大好きなブランドのサンプルセールに参加をさせて頂きました。
きっかけは先日、ぼくも個展にお邪魔させて頂いた画家の方のお知り合いの方が古着屋さんを経営されていて、その方宛に届いたという一通のハガキ。
 
なんと、その古着屋のオーナーさんが「○○(画家さん)の知り合いで、このサンプルセールに参加するブランドが好きなブロガーさんがいたと思うんだけど、良かったらどうかな?」
と言って下さったそうで。
 
専ら大好きなブランドで、専ら買った服をブログで紹介していたぼく。
まさか憧れのブランドのサンプルセールに参加できる機会を頂けるなんて、「ブログをやっていてよかった。発信し続けていてよかった」と思った瞬間でした。
 
ワクワクしながら会場に向かう。
そこには近くのマ○クで大量に購入したであろうハンバーガーと缶ビール。
色々なブランドさんが共同で開催している、知り合いだけを招いたクローズドな、お祭りのようなサンプルセールのようでした。
 
ぼくはお目当てのブランドブースへ。
そこには今までのコレクションで眺めてきた、ぼくにとって宝物のようなアイテムがずらり・・・。
 

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手放しに喜ぶどころか、「アパレルは本当に大変な仕事だ」と心底思った

「あのコレクションのシャツがあるじゃん」「あのアウターも」「あのニットも」
サンプル商品の具体的な販売価格はここでは伏せますが、基本的にはぼくが想像していた価格の更に倍は安く販売されていました。
 
といっても今お店に並んでいるものや、望み通りのアイテムが安く手に入る訳ではなく、あくまでサンプルとして作られ、役目を終えた1点物を売りさばく機会といったイメージ。
そこまで安く買えるのも、ブランド側は利益を求めて行っていることじゃないからなのでしょう。
加えて業界の人たちが集う場所だからこそ。基本的には仲のいいブランドさん同士でサンプルを販売する、あくまでクローズドな場所というイメージでした。
 
初めてサンプルセールに足を運んだ訳ですが、「好きなブランドの服を安く買える」と手放しで喜ぶどころか、改めてアパレルのお仕事の大変さを感じた、というのが正直な感想でした。
 

そもそもサンプルセールの「サンプル」とは何なのか

少し今更かもしれませんが、そもそもサンプルセールで販売される「サンプル」とは何なのかを、具体的に書いてみたいと思います。
大まかな流れを書いてみますが、ぼく自身はあくまでアパレルブランドで働いた経験がないため、間違っている部分もあるかもしれませんが、悪しからず・・・。
 
ブランドが洋服を作って販売しようと考えたとき、自社で店舗を持っていれば販売経路はまずひとつ確保ができています。
加えてより売り上げを増やすためには、地方でもブランドの洋服を取り扱ってくれる”セレクトショップ”に商品を仕入れて貰わなければなりません。
 
デザイナーさんが作り上げた世界観に基づいて春夏・秋冬のコレクションが年に2回発表される。
そこで発表する洋服の写真(ルック)を撮るため、工場に依頼してデザインした洋服を実際に作ります。
これが、いわゆる「サンプル」と呼ばれる洋服。基本的には一点物。
 
モデルさんがサンプルを着てルックを撮影する。
ブランドはルックの公開と共に、コレクションの全商品を並べた展示会を行う。
これはブランドの洋服を取り扱っているセレクトショップや、取り扱いを検討しているお店に対して「今シーズンはこういう服を展開しますよ」と、文字通り展示をする会。
 
全国から展示会へ足を運んでいるセレクトショップのオーナーへ向けて商品の説明をする。
少しでも多くのアイテムを取り扱ってもらえるように、数を仕入れてもらえるように、いわば営業の場と言えるのでしょう。
 
一般のお客さんに向けてコレクションのルックを発表する。
ブランドによってはZOZOTOWNなどで期間限定にて受注を承ったりもする。
 
セレクトショップ向けの展示会分と併せて、注文が入った数だけ工場へ生産を依頼する。
商品が完成したら、納期までに各セレクトショップへ配送を行う。
 
販売開始のタイミングに合わせて各セレクトショップ、自社ブランドの旗艦店に商品を並べる。
ここで初めて、ぼくたち一般客はネットで見ていた洋服の実物に見て触れることができる。
 
・・・と、大まかな流れはこんな感じなのではないかと思っています。
繰り返しますが、ぼくはブランドで働いたことがないので、この順番が本当に正しいものかは分かりませんが。
 
サンプルセールで販売される「サンプル」
デザイナーさんがイメージした洋服を製品化前、いちばん早い段階で作り上げた洋服のこと。
ルックの撮影や、展示会での営業に使う、それぞれ一点物の洋服のことを「サンプル」と呼びます。
 

サンプルセールは年2回。ブランドによっては在庫を赤字で清算する場でもある

シーズンアイテムの展開を実店舗で終え、サンプルがサンプルの役割を完全に果たしたタイミングで行われるのが、それを売り切る場としてのサンプルセール。
いわばブランドとしては不必要な在庫となるそれを販売する機会です。
 
常連のお客さんだけを招待して行うブランドもあれば、ネットで大々的に告知をして大規模に行うブランドもあったり、様々。
サンプルは基本的に真ん中のサイズ(Mサイズ等)で作られていることが多いと思うので、サイズが合う人にとっては非常にお得な買い物ができる機会になります。
 
恐らくここでのサンプルアイテムの販売価格は、生産に掛かった原価そのもので、利益が出るものではほとんどないと思います。
不必要になったサンプルを売り切って、翌シーズンのサンプルを作るための資金に回す、といった具合なのでしょうか。
 
ここまでのサイクルを回しながら、年に2回新しいものを作り発表し続けなけばならないのがファッションブランドというもの。
考えただけでも大変なお仕事だな、と思いますが、毎回シーズン終わりに全ての在庫を綺麗に清算できるほど、今のアパレル業界は好調ではありません。
 
むしろ作った服が余ることの方が多く、そういったブランドはシーズン区切りのサンプルセールを機に在庫を原価、もしくはそれ以下で販売することも。
今回ぼくが参加させて頂いたサンプルセールは非常にクローズドなもので、一般のお客さんがいる様子はあまりなかった為、そのようなことはなかったように思います。
 
一方でネット等で大々的に広告を打ってサンプルセールを行っているブランドに関しては、恐らくそこでシーズンの在庫も破格の安さで販売しているのではないかと思います。
作った洋服が売れずに売れ残り、サンプルセールにて破格の安さで売りさばく。
そういった苦しい状況に立たされているブランドもそう少なくない、むしろ多いように感じます。
 

今の時代に洋服が売れないのはどうしてなのか?

となると、考えることはひとつ。
「今の時代に洋服が売れないのはどうしてなんだろう?」
 
正直、今の時代に特別勢いのあるファッションブランドはひとつも存在していないように思います。
個人的にそれは洋服だけじゃなく、音楽にも言えることだと思っていて。
音楽だけじゃなく、もっと色々なジャンルにも共通していると思っていて。
 
昔は多くの人の注目を集めたもの。
今も人々の関心が集まっていることは間違いありません。
ただ、ひとつのブランドが爆発的なまでに流行るという現象が起きない原因として”以前よりもひとつの対象に注目が集まることが減った”ということも、理由のひとつだと思っています。
 

理由① 情報の発信源が無数に存在するため、時代は”狭く深く”へ

昔は雑誌だけがファッションの情報を仕入れるためのツールだった。
雑誌にはそれぞれジャンルがあれど、雑誌というもの自体への関心が高かったため、読んだ人たちは載っているブランドに熱狂した。
 
ところが今では雑誌やウェブメディア、SNS・・・。
情報発信を行うツールが無数に存在する上、誰もが手軽に発信をできる時代。
発信源があまりにも多いため、ひとつの対象にたくさんの注目が集まる機会は格段に減りました。
 
それぞれのブランドが今までよりも集客に困ることは当然です。売り上げが下がるのも当然のこと。
 
その分、消費者としてはそれぞれはより細かい自分の好みに合わせた好きなブランドを見つけられるようになったと思っています。
巡り会うこと、探し当てることこそ大変ですが、好みにジャストフィットしたブランドと出会える可能性は増している。
ブランド側も考えを”狭く深く”に切り替えた方が、生き残るには適しているのではないか、なんて思います。
 

理由② 「流行」を追い求めなくても必要なものが既に手元にある時代

今はひと昔前のように「手元にモノがない、足りないから」という時代ではありません。
むしろモノが溢れかえっているから、それぞれが本当に欲しいと思ったモノ、洋服に関しては長く着続けたいと思えるものしか売れない時代。
 
ぼく個人の考えにそれを当てはめてみても、あながちズレている気はしません。
10万円を出してでもずっと着たいと思えるライダースジャケットを買ってみたり、1本のジーンズをボロボロになるまで穿き倒したいと思ったり。
経年変化を見せてくれる洋服が大好きというのは、モノが溢れた時代に生まれたからこそ。
出会えたモノを大切にしたいと思う気持ちそのものだと思うんです。
 
必要なモノは手元にたくさんある。洋服に関して言えば、ぼく個人の考えとしては少し高くてもずっと着ていたいと思える服だけが欲しいと思う。
流行を楽しみたい気分なら、古着で安く手に入れればいい。
 
古着を好きになってから感じたことですが、現代における全ての服は、当然ながら過去に生み出された服に習って作られている。
全ての源流は古着にある。それゆえ、今流行っている最新のアイテムだって海外仕入れの古着屋さんで同じディテールのそれを手に入れることが可能なんですよね。
 
デザイナーズブランドのほとんどは現代の、最新技術や素材を生かした服作りを行なっていない。
今じゃなくてもできることをやっているから、むしろ古着の再現ばかりをやっているから、売れないのかもしれません。
過去の焼き増しをするくらいなら、そのブランドにしか作れない服じゃないのなら、古着でも何でも探して買うことができちゃいますからね。
 
話が少し脱線しましたが、流行なら古着でも真似できる。本当に長く着続けたいと思える服にしかお金を払わない時代。
この状況において、高値で(製造工程で費用が掛かるため、販売価格が上がるのは仕方ないことですが)流行の、字の如く「流れて行く」アイテムを販売するんじゃ、在庫を抱えて赤字になる訳ですよね。
 
とはいえアパレル企業は今までそうやって商売を続けてきた。継続して利益を上げるための具体的な方法がこれ。
縮小していく市場の中で、規模を小さくしながらもこれまでと同じ動きを続けていくしかない、そう考えているブランドがほとんどなのだと思います。
 

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「広く浅く」よりも「狭く深く」を考えるとき

先ほども触れましたが、こんな時代性の今においては、昔のようにファッションはそこまで影響力のあるモノではなくなってしまった気がしています。
コレクション自体に興味を持つような人は減って、良くて「あの芸能人が着ていたから欲しい」と思われるような時代。
 
既に規模の大きいブランドは、特にハイブランドなら、若い人に「いつかあのブランドの洋服を買いたい」と憧れを持ってもらえるようなアプローチが必要かもしれません。
それ以外のデザイナーズブランドなら、今まで通りの「広く浅く」なアプローチを変えるべきタイミングなのかもしれません。
 
「広く浅く」のアプローチは多くの人にブランドを知ってもらうためのSNS運用だけにしておき、コレクションはごく一部の人のツボに入るようなものを。
それも、ツボに入ったら思いっきり深い部分を狙えるようなコレクションを。例え「好き」と言ってくれる人数こそ少なくても、コアなファンを獲得できるようなものを。
 
少数の、でもコアなファンを集めることを何より大切にする。そこから規模を広げていく。
そんなアプローチの方法が、今の時代には合っているんじゃないかな、とぼくは思っています。
 
ぼくはアパレルのお仕事を知らない素人ですが、初めてサンプルセールに参加をさせて頂いて、業界の現状を肌感覚で感じて、「とても大変な業界であり、お仕事だな」と心底思いました。
アパレルだけじゃなく、他の業界にも共通して言えることだと思います。
今までの方法で大きな売り上げを上げた経験があったとしても、今の時代じゃ同じ方法は通用しないというか。
 
やり方を大きく変える必要があるタイミングなのではないかな、と思っています。
大規模なファッションブランドは、ぼくの想像よりもずっと苦しい現状にあった。

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いわた

いわた

1994年生まれの24歳。大学在学中に「小遣い稼ぎがしたい」という理由でブログを始める。就活を行うも、面接に落ちまくったことから新卒で職業「ブロガー」として独立。現在は2017年8月に開設したファッションブログ「いわたの偏愛コレクション」と共に、2つのブログを運営している。
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