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刺繍でしか表現できない世界観。震災復興を願って作られた伝説の”不死鳥スカジャン”

デザイナーズブランドの過去作品って、欲しいと思っても見つからないことがほとんどです。

ただでさえ流通量が少なくて、その上、買う人たちもブランドのファンであることが多いため、手放す可能性も低くて。

 

中でも作るのに手間が掛かるもの。それらは元から生産される量が少ないため、手に入れることはもっと困難です。

そういうアイテムに限って、人気が高かったりするのも事実です。だからもう、半分幻の存在のようにも思えていて。

 

そんな認識でいながら、ぼくがずっと探し求めていたものが、MIHARAYASUHIROの2014年春夏コレクションで発表された、通称”不死鳥スカジャン”

発売から4年が経った今でも欲している人がたくさんいて、二次市場に出回ることがほとんどなくて。

 

時々、ホワイトベースにインディゴで染められた色味のそれは見かけますが、それも本当に時々。そして、探しているのはそれじゃなかった。

黒いボディーに、紫の糸で刺繍が施されたそれひとつ。ただそれを、ぼくは毎日探していました。メルカリ、ヤフオク、楽天市場・・・。

 

そうして探し続けた1着を、奇跡的に手に入れることができました。もうこれ、何年か掛けてずっと探し続けていたんです。

満を持して紹介します。MIHARAYASUHIRO 2014年春夏コレクションの”不死鳥スカジャン”を。

 

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震災復興の願いを込めて。不死鳥が舞う不滅の名作スカジャン

2011年、日本に大きな悲劇をもたらした震災がありました。東日本大震災。日本人なら、絶対に忘れてはならない出来事です。

その衝撃を受けて、日本中が震撼しました。

 

当時、高校生だったぼくも、テレビCMがずっとACのそれだけになったこと、どんなテレビ局もニュース報道しかしていないこと。

それらの事実を受けて、事の大きさを改めて感じたことを今でもよく覚えています。

 

それぞれが、それぞれにできることを。芸人さんなら、そんな時だからこそ国民に笑いを届けようと、あえていつも通りのラジオ放送を行っていたり。

ミュージシャンなら曲を作って、ライブを行って、収益の一部だったり、はたまた全てだったりを、被災地へ寄付していたり。

 

そんな中で、ファッションブランドにできることは何だろうか。デザイナー、三原さんの頭の中にはきっとそんな想いがあったのでしょう。

MIHARAYASUHIROは2014年の春夏コレクションとして、フェニックス(火の鳥)をモチーフとした作品を発表します。

火の鳥。漫画家、手塚治虫が描いた不朽の作品。不死鳥と、人間の輪廻転生のお話です。

 

大きく羽を広げて舞う不死鳥。刺繍で刻まれた”Japan”の文字。

よく見るスカジャンの、背中に羽ばたく鳥が一体何なのかを、ぼくはよく知りません。

それでもMIHARAYASUHIROがこのタイミングで発表したスカジャンの背中に舞うは、不死鳥。それと共にある”Japan”の文字。

 

どれだけ危機に陥ったって、絶対に死んだりしない。東日本大震災を受けて作られたこの1着には、とても重みのある意味が存在しています。

日本は絶対に、この震災からも立ち上がる。

 

絶対に刺繍でしか表現できない世界観。その迫力に言葉を失くす

不死鳥が舞う、壮大な世界観を表現するために使われたのは、刺繍を施すという手段。

それゆえのスカジャンですが、この世界観は間違いなく刺繍でしか表現できないものです。

胸元には印象的な火の鳥のモチーフを。両腕には、不死鳥の羽を、これでもかと言うほどに、とんでもない迫力と存在感。

 

このコレクション以降、両腕に不死鳥の羽が刻まれたモチーフはブランドの人気作品となりました。

高度な技術を使って精巧な刺繍を両腕に刻んだスウェットは、今でも不定期で販売され続けています。

 

糸の1本1本に立体感があります。遠くから見ればその迫力に、近くで見ればこの精巧さに、思わず息を飲み言葉を失くしてしまいそうになる。

火の鳥が持つ、美しくも繊細な羽をしっかりと刺繍を使い再現しています。もはや、不死鳥の息吹すら感じる。

 

両腕に刻まれた刺繍は、不死鳥の羽が宿ったスウェットやTシャツは、ブランドが現行で販売しているもの。

これはぜひ一度、お店に足を運んでその迫力を直に感じて頂きたいところでもあります。

 

しかし、背中に刻まれた不死鳥。その代表的なデザイン故にスカジャンと呼ばれるこの1着は、もはや二次市場でも滅多に見ることができないもの。

不死鳥と、大きく刻まれた”Japan”の文字。そして、富士山。

 

そこに込められた深い意味もそうですが、単純にいち洋服としても本当に格好いい。

”背中で語る”こと。それには、どことなく男としての憧れが詰まっています。

 

スカジャンは夏に着れないけれど、例えば夏なら服装がシンプルになる分、背中にド派手な刺繍だったりプリントの施されたワルい服を着たくなるんですよね。

 

着れなかったら部屋に飾る。見つけた嬉しさからサイズ表記を確認せず購入

さて、晴れてずっと探していたスカジャンを見つけたまではよかったのですが、実はそこからが問題でした。

この1着をネットで見つけてから、ぼくはサイズもほとんど見ずに即決で購入していたんです。

というのも、いわゆるフリマアプリでは実物のサイズに沿った表記を正確に書いてくれる人って意外といなくて。

 

Sサイズって書いてありながらMサイズの服が届いたりしたことが、何度かぼくにはありました。

それ以降、そういったサイトを使うときは基本的にサイズ表記をほとんどアテにせずに購入しています。

 

このスカジャンもサイズ表記にSとあったのですが、MIHARAYASUHIROはサイズ表記がそもそも数字である上、それもあまりアテにならないブランドだったりして。

ぼくはブランドの靴を持っているのですが、かなり作りが大きめなことから、26cm表記で実際は一般的な28cmだったりとか、余裕でするんですよね。

 

着れなかったらもう、いや、着れなくてもいい。そうしたらこの芸術作品をただ部屋に飾ることにするから。

そんな思いで届いたそれを開けてみると、サイズ表記は44でした。ブランドでいうSサイズ相当ですが、それをぼくが着てみるとこんな感じ。

 

脇の下の余裕こそ少ないものの、肩もギリギリ入っているしで、なんとか着れそうなサイズ感でした。

ちょっと着丈が短くは感じますが、スカジャンは短めで男らしく着る人もいる訳で・・・大丈夫、とします。

 

後ろからも見てみます。

これ、中に着ているのが前の記事で紹介したDunnoのTシャツで、着丈が少し長めなのでレイヤードするとこんな感じなのですが、普通のTシャツを着れば黄金バランスができるはず。

 

生地感に関しての記述を忘れていましたが、思っていたよりも頑丈そう。

よくあるスカジャンならレーヨンをベースにした、ゆらゆらと風に揺れるしなやかさと落ち感のある生地感ですが、この1着は王道を選びませんでした。

コットンを主にした、ガシガシ着てもヨレなさそうな頼り甲斐のある生地感。ツイル生地とも少し違いますが、経年で白っぽさが出てきそうな。

 

裏表にこれだけド派手な刺繍を刻み込むともなれば、やはり少しばかり強めの生地を使うことにもなりますよね。

どちらかというとぼくはスカジャンの、あのゆらゆらと揺れる生地感と光沢にチンピラっぽさを感じてしまうので、こちらの方が好みです。

 

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スカジャンの流行。その背景に国を想う心があったなら

2014年、ちょうどデザイナーズブランドの春夏コレクションがお店に並んだ時期くらいから、1年以上に渡ってスカジャンがとても流行りました。

街行く人の多くがスカジャンを着ていた。

 

そのデザインは色々だけど、背中にはやっぱり”Japan”の文字と、羽を大きく広げた鳥(って書くと格好悪いけど、何の鳥か知らず・・・)

やっぱり両腕にまでこれだけ派手な刺繍が施されたスカジャンはMIHARAYASUHIROのそれくらいで、街で見かけたことは一度もなかったけれど。

 

きっと今もうっすら続く80年代、90年代のリバイバルブームの一貫で流行っていたんだと思います。

ただそれだけの理由でも、多くの人がスカジャンを着ていたこと。これにぼくは、勝手に意味を感じてしまう。

 

着ている人の心の中に、日本を想う心があったなら。東日本大震災で大ダメージを受けた日本を、皆で支えて再興させていこうという持ちが少しでもあったなら。

背中に大きく”Japan”と刻まれた服を着るにあたって、ほんの少しでもその想いが胸をよぎった人は、きっといると思います。

皆で日本を背負っていく。その意思表示手段として、着ることを選んだなら。これほど素敵なことはありません。

 

これが、ファッションにできること。ただ着飾るために洋服を着るのもいいけれど、やっぱり意味の込もったファッションっていうものには、何か格別な格好良さを感じます。

ぼくがこのスカジャンを買ったのは、もちろん見た目が格好いいからでもあります。

その刺繍にとんでもない迫力を、魅力を感じたこと。もはやこれはアート、芸術作品だと思っています。

 

でも、それに袖を通すときは、この国の再興を願っていること。できることはやっていくこと。

その意思表示でもあることを、いつでも兼ねています。

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いわはし

もうすぐ30歳になるので、うかうかしていられません。