世界で活躍するファッションデザイナーが「売れない服」を作り続けるワケ

日本で生まれ、世界をフィールドに戦い続けるファッションブランドがある。

今や多くの日本人デザイナーが世界的に評価されているが、その先駆けとなったブランドがふたつ。

 

川久保玲がデザイナーを務めるComme des Garconsと、山本耀司がデザイナーを務めるYohji Yamamotoだ。

 

80年代、それまでパリでタブーとされていた「黒色」をコレクションに用いて、世界に「黒の衝撃」をもたらした生きる伝説たち。

彼らは今に至るまでずっと、日本に限らず世界の最先端に立ち続け、最先端のモードファッションを発信し続けている。

 

しかし多くのファッショニスタに支持されるこの2ブランドのデザイナーは、異口同音にこう述べる。

 

「コレクションを多くの人に褒められると、不安になる」

「褒められたら、やばい」

 

これは一見、自ら作った洋服が売れてほしくないと言っているようにも感じられる。

それでもそんな発言とは裏腹に、圧倒的な人気で業界を牽引し続ける2つのブランド。

 

この発言の裏にはどんな意図が隠されているのか。

ぼくが思うに、その答えはこうだ。

 

その服を目にする人が100人いたら、全員に受け入れられる八方美人な服は作らない。

うち1人の心に鋭く突き刺さって共感や感動を生む、棘のような服を作り続ける。

 

これは一見、売れないデザイナーの思考に思えるけれど、それが結果的に多くの信者を生み出すことに繋がっているのだ。

 

スポンサーリンク

川久保玲と山本耀司が感じる「絶賛への危機感」

先ほども少し触れたように、川久保玲と山本耀司は作品を多くの人に褒められると、その状況に危機感を抱くという。

彼らがこれまでにどんな言葉を残しているのか、実際の発言を引用してみよう。

 

f:id:kota04:20170302092131j:plain

引用:http://moogry.com/index.php?req=%E5%B7%9D%E4%B9%85%E4%BF%9D%E7%8E%B2

「作品に対し『よかったですね』『綺麗だったですね』と皆から評価を受けたら、不安で仕方ないです。

そんなにわかり易いものを作ったのかと、自己嫌悪に陥ってしまいます。」

 

「誰にでもわかって、よく売れそうで、という服を作っていたらコムデギャルソンの存在はありません。」

川久保玲が、ただ多くの人に自身の作品を着て欲しいと思ってデザインをしていないことがよくわかる。 

 

正直、ぼく自身はComme des Garconsの洋服をあまり着ない。

数年前にDOVER STREET MARKETでシャツを1着買ったきりで、それも今では滅多に着ることがない。

 

これは単純に、ぼくはComme des Garconsのような洋服をあまり手に取ることがないし、好みが違うというだけ。

それでもファッションに対する、洋服に対する考え方や向き合い方に関して、ぼくは川久保玲の考えをとても尊重している。

 

ぼくもひとりの服好きとして、周囲に理解されないような格好をすることが多々ある。

10人いれば9人に「その格好、変だね」と罵られ、残りの1人に「素敵ですね」と褒めてもらえるようなコーディネート。

 

ぼくはファッションなんてそれくらいでちょうどいいと思っているし、多くの人に褒められると複雑な気持ちにもなる。

「今日の格好はそんなにも単調で受け入れられやすい、退屈なスタイルだったのか」

こんなことを思うことも、時々ある。

 

きっと川久保玲の感じる自己嫌悪も、この気持ちに似たものなんだろう。

 

そしてもう1つ、世界に「黒の衝撃」を与えた、ファッションの歴史を語る上で欠かせないブランド。

デザイナー山本耀司率いる、Yohji Yamamotoだ。

彼もまた、多くの人に作品を褒められることに危機感を抱いている。

 

f:id:kota04:20170302094527p:plain

成功したことを続けるのは恥ずかしいこと。褒められたらやばい、と思わないと。

 引用:https://www.wwdjapan.com/307602

言葉こそ違えど、川久保玲と同じ意味の発言をしているのだ。

 

世界を舞台に最前線で輝き続けるファッションデザイナーが、こうも同じことを言う。

彼らが感じる「絶賛への危機感」とは。

 

その正体は、「私の作品は誰の心にも刺さらない、軽薄なものだったのか」

「八方美人で誰の心にも刺さらない洋服を作ってしまった」

こう感じるところにあるのだろう。

 

八方美人な服や言葉は、誰の心にも刺さらない

企業が新しい商品を販売するとき、当然ながらそれを多くの人に手に取ってほしいと思うだろう。

 

しかし、だからといって決して万人受けする八方美人な商品を作るようなことは絶対にしない。

むしろ特定の人物の顔が浮かぶほどに年齢や職業、ライフスタイルを仮定し、その人にだけヒットする商品を作ろうと試行錯誤する。

 

これをビジネス的な観点から、マーケティング用語でいうと「ペルソナ設定」になる。

八方美人で大衆ウケしそうな商品を作ってはいけない。

たったひとりの心に刺さる商品の方が、結果としてペルソナと同じ考えを持った多くの人の心に刺さるのだ。

 

これが言えるのは企業が新商品を開発するときだけではない。

川久保玲や山本耀司が「絶賛への危機感」を感じるのは、まさにこれと同じ理由なのだ。

 

彼らは絶対に多くの人に受け入れられる八方美人な服を作ろうとはしない。

なぜなら八方美人な服は誰の心にも刺さらないことを知っているからだ。

 

手に取る人が100人いたら、うち1人の心にだけ鋭く突き刺さって共感や感動を生む、棘のような服を作り続けている。

だからこそ、「多くの人から褒められるとやばい」と感じるのだ。

 

そんなものは、八方美人な服は誰の心にも刺さらないどころか、かすってすらいないのと同義。

世界観がわかり易く、退屈な駄作を世に放出してしまったのと同じことなのである。

 

もちろん前提として、彼らは「売れる服作り」なんてものは大嫌いだ。

洋服をお金儲けのためだけに作っているのではない。

それぞれが、それぞれの想いを服に込めて発信を続けている。

 

これは、ぼくが書き続けるこのブログでも同じことがいえる。

読んでほしい人の顔を明確なまでに浮かべて、読者層を徹底的に絞った記事ほど大きな共感を生んできた。

反対に読者の顔を思い浮かべず大衆に向かって情報を投げかけただけの記事は、読まれはしても手応えはない。

 

今はぼくのブログに情報だけを求めて訪れる人が大多数だ。

情報だけでなく、その背景にあるメッセージに共感する人を増やすには、やはり八方美人な記事を書いてはいけない。

 

読者が100人いたら、うち1人の心にだけ鋭く突き刺さって共感や感動を生む記事を書き続けなければならない。

 

この姿勢に切り替えればファッションブランドなら売上が、ブログならアクセス数が一時的に落ちることを恐れるだろう。

それでも、誰の心にも刺さらない八方美人な何かを生産するより、鋭く尖らせてたった1人にだけ突き刺す棘の方が美しいのだ。

 

目の前にいるたった1人のためだけに、洋服を作り続ける。

尖らせて尖らせて、その姿勢を貫き続けたからこそ、彼らの作る服は今でも多くの人に支持され続けている。

 

そう考えると、個人経営のセレクトショップが露骨に「一見さんお断り」な雰囲気を演出する意図も汲み取れる。

誰からも支持される八方美人のようなお店は作りたくない。

コンセプトが心に深く突き刺さって、共感してくれた人にだけ愛されるお店でありたい、ということだろう。

 

ファッション業界は今、全体として景気が悪い。

セレクトショップは最初に掲げた方針をお店の売上が落ちても変えずに保ちつつ、その上でどう工夫をできるか。

 

これが非常に大きく難しい課題なのだろう。

いち服好きとして意見すれば、売上を第一に優先して方針をひょいと変えてしまうお店ほど退屈なものはない。

 

スポンサーリンク

世界で活躍するデザイナーは売れない服を作り続ける

八方美人で誰にでも受け入れられる服でなく、100人いたら1人の心にだけ鋭く突き刺さって共感や感動を生む服。

 

これは世間一般的に見たなら「売れない服」以外の何物でもない。

実際に今はファストファッション登場の他、様々な要因が重なって値段の高い服は売れにくい傾向にある。

 

それでも世界で活躍するデザイナーは売れない服を作り続け、目の前にいるたった1人を幸せにしようとする。

もはやお金稼ぎのために服を作るのではない。

 

自身の作品を本当に愛してくれた人の生活を豊かにするために、そして幸せにするために彼らは服を作り続けているのである。

The following two tabs change content below.
いわた (岩橋康太)

いわた (岩橋康太)

大学を卒業後、就職せずにブログの収入で生計を立てている22歳です。家にいることが大好きなので、その時間を最大限確保するためにブロガーとして生きる道を選びました。毎日のんびりしながら、大好きなブログと洋服のことだけを考えて生きています。
▶︎いわたの”逆”お悩み相談者さんを募集中
詳しいプロフィールはこちら
いわたのTwitterをフォローする
お問い合わせはこちら

もう1記事読んでいきませんか?

いわたが着なくなった服と想い、ネットで売ってます

オンライン通販サイト「iwatashop」では、いわたが着なくなった服を販売中。

商品は随時追加しています。