「ノームコア」の流行は、ファッション業界が抱える大きな課題を浮き彫りにした

以前もブログで紹介しましたが、この本が本当に面白いんですよ。

BEAMSが創業40周年を記念して発刊したムック本。

1976年から現在に至るまで、その年に流行った服装を再現した写真に加えて、流行の背景を解説している内容の濃い1冊です。

 

ぼくはこの本を読みながら、ファッションの流行と世間の風潮における関係性、そしておしゃれな人の思考を想像してみたんです。

すると、そこには面白い発見がいくつかありました。

 

中でも特に興味深いのが、2014年に流行った「ノームコア」なファッションスタイル。

これが流行った背景を想像すると、今のファッション業界が抱える課題と、街にいるおしゃれな人の思考が見えてきたんです。

 

その結果、ぼくには2014年に流行ったノームコアが、単なる流行として過ぎ去っていくものとは思えませんでした。

むしろこれから更に進んでいく、ひとつのファッションスタイルだと思うんです。

 

スポンサーリンク

そもそも「ノームコア」とは?

ノームコアとは、英語の「ノーマル」と「コア」が掛け合わさって生まれた言葉。

訳すと「究極の普通」を意味しています。

 

遡ると、洋服は体を隠すために必要なモノとして生まれてきました。

それを身にまとうことで体を隠す。生活にはまず欠かせない、衣食住における”衣”の部分ですね。

 

最低限の機能性を持つものとして生まれた洋服は、時を重ねるにつれて個性の演出に使う手段のひとつとなりました。

ボーダー柄の服を着て、ドット柄の服を着て、人々はそれぞれ自己表現を始めます。

 

「他人と違う」を追い求めてどこまでも続く、洋服を使った自己表現。

それは時を重ねるにつれて柄を派手に、加えて組み合わせを個性的にしながら続いてきました。

 

そんな流れに疲れた人たちが「シンプルイズベスト」を追い求めて辿り着いたスタイルこそが「ノームコア」と呼ばれています。

「個性的なファッションはもういいから」と、洋服が本来持っている存在意義に原点回帰した瞬間。

 

2014年は、そんな「ノームコア」なスタイルが大きく流行った年でした。

 

「ノームコア」の背景にある世間の風潮

先ほど紹介した本では、「ノームコアはファッションを一通り経験した人たちの原点回帰による流れ」と紹介してます。

ぼくとしては、このスタイルが流行った背景にはもっと深い何かが関係していると思って色々と考えてみたんです。

 

・・・すると浮かび上がってきたのは当時の世間における風潮でした。

思えば2014年はかねてより不景気だった日本の景気が、誰の目にも見える形になった年だったんですよね。

 

大企業が社員を大量リストラ。そんなニュースが絶えなかったこの年。

国の不況を目に見える形で実感した人々は、自分の身にもいつ降りかかるかわからないそれを恐れて消費活動を控えるように。

 

そんな流れから「モノを持たない暮らし」にスポットが当たるようになりました。

人々は「多くのお金を稼ぐ」ことよりも、「少ない収入でも幸せに暮らす」ライフスタイルに価値を見いだし始める。

 

少ないモノに囲まれて豊かに暮らす「ミニマリズム」が注目を浴びたのもこの頃でしたよね。

それなら、かさばるモノの代表格と言っても過言ではない服を減らさないと、ミニマリズムは始まらない。

 ファッションにおけるノームコアの流行には、国の不況やミニマリズムへの注目といった背景があることは間違いありません。

 

呼び名が付いただけで、実は以前から存在した「ノームコア」

そんな背景をきっかけに、2014年を代表する流行となった「ノームコア」

街を歩けば白無地Tシャツにジーンズと、外を歩くのに必要最低限かつシンプルな格好をした人が増えましたね。

 

こうしてノームコアの流行に乗った人からすれば、

「ファッションはシンプルが一番」

「柄物の主張は子供っぽくてダサい」

 

こんな風に見えていたかもしれません。

「ノームコアな服装をしている俺 (私)、めっちゃカッコイイ」と。

 

それでもぼくには、そもそもおしゃれな人がシンプルでベーシックな服装をするのは当たり前に思えていました。

流行に乗るうんぬんではなく、それに左右されない、一定数はいる本当に洋服が好きでたまらない人たち。

 

ノームコアが流行ったこの年は、そんな本当の服好きにこそスポットライトを当てたように思うのです。

彼らの今まで「シンプルな格好」と呼ばれていたそれに、流行の影響で「ノームコア」の呼び名が付いた瞬間。

 

ぼくはそれと同時に、この瞬間からファッション業界の抱える大きな課題が浮き彫りになったと感じています。

 

本当におしゃれな人は、「ベーシック」の魅力を知っている

本当におしゃれな人は「ベーシック」な服装が持つ真の魅力を知っているんですよ。

ここでいうそれは、高校生が読むファッション雑誌に載っているようなコーディネートのこと。

 

代表例を挙げるとすれば、春や夏ならデニムシャツやスウェットにジーンズ、チノパンを合わせたスタイル。

冬でいえばPコートやモッズコートにジーンズを合わせたようなスタイルでしょうか。

 

本当に洋服が好きで、おしゃれが好きでたまらない人たちがベーシックな服装に原点回帰する理由。

それは多くの服を知れば知るほど、定番アイテムには定番になるだけの理由があると知るからでしょう。

 

今の時代に生まれる全ての服は、過去の服をデザインソースとして生み出されます。

これだけ満たされた世の中で、本当に何もないところから新しい洋服を作ることはほぼ不可能。

ゆえにどんなデザイナーでも既存のデザインを組み合わせて新しい洋服を生み出す時代となりました。

 

洋服を本質的に愛している人ほど、服を手に取ると「この服は何をルーツに作られているんだろう?」と気になるものです。

そうして彼らが歴史を遡って・・・辿り着いた最終到着地が定番アイテムから構成されるベーシックなスタイル。

 

ここで初めて、ぼくらが高校生の頃に袖を通した定番アイテムが「定番」として支持される本当の理由を知る。

定番には、定番になるだけの理由があるんだな・・・と、本質的に理解することで改めてそこに憧れを抱くのでしょう。

 

少し悪い表現ですが、カジュアルブランドが定番と銘打って販売するアイテムは「レプリカ」のようなもの。

本当に洋服を好きな人は、高校生の頃に袖を通したレプリカとは違った「本物の定番アイテム」を追い求めるんです。

 

ゆえに本物の定番アイテムが持つ魅力を知っている人は、必然的にベーシックな服装をすることになるのでしょう。

まさに傍から見たなら、この様子はファッションにおける原点回帰そのもの。

この過程こそが、シンプルイズベスト改め「ノームコア」を追い求める服好きの変遷を表しています。

 

「ノームコア」の流行が浮き彫りにした、ファッション業界の課題

今の時代におけるファッション業界はもはや飽和しています。

誰がデザイナーのブランドでも、おおよそは過去に有名なブランドのコレクションで見た服の焼き増しがほとんど。

ファッションに限った話ではありませんが、ゼロからモノを作るのが非常に難しい時代となりました。

 

変化が激しいようで実は乏しい今の時代に「最先端」を求める人は減り、過去のスタイルに注目が集まっています。

それを代表するかのように、まさに今人気なのがファッションの「80年代リバイバル」

 

MA-1やダメージジーンズなど、過去に流行ったアイテムが再び人気を集めているのは皆さんもよくご存知でしょう。

ファッション業界は今、業界全体で新しいモノを生み出せず苦しんでいます。

そんな飽和状態の業界に、今求められるのは、ずばり革命。

 

「流行は一周する」とは言いますが、このまま業界全体で過去のデザインを焼き増すだけでは、更に負のスパイラルに陥ります。

服が売れない時代の今、背景にある問題の影響もありますが、いちばんの原因は業界に「新しさがないこと」でしょう。

 

今では流行から定番に落ち着いた「ノームコア」

この飽和しきった業界のままでは、ますますそこに原点回帰する人が増える一方です。

 

潜在的に潜んでいた「シンプルイズベスト」なニーズは、ノームコアの流行によって表面的なものとなりました。

パリや東京をはじめとした地で行われる華やかなコレクションには目を向けなくなる人が増えています。

 

仮にも原点回帰ということで古着市場は栄えるかもしれませんが、それ以外はどうなっていくのでしょうか。

ファッション業界は全体として「リバイバル」を掲げるだけでなく、新たな革命を起こさなければならないのです。

 

スポンサーリンク

飽和しきった業界の先にある、他人の目を気にしないファッション

ぼくは「ノームコア」こそが至高のおしゃれだと認識しています。

ノームコアという言葉におけるぼくの解釈は、流行の側面が強いそれとは少し違ったものかもしれません。

 

本当に洋服を好きで仕方ない人が、一周して辿り着いたシンプルなファッション。

それは傍から見たらおしゃれには見えないかもしれません。

 

けれど、ノームコアを極めた先に「他人からおしゃれに見られたい」なんて願望は存在しないんですよね。

ここまで到達するともはや、ファッションは自己満足になります。

自分が着ていて気分の上がる服を身にまとっていれば、それでいい。

本当の服好きにはこんな考え方の人がほとんどです。

 

「おしゃれな格好」とは、他者評価の上に初めて成り立つものでした。

他人にそう思われて初めて、そのファッションが「おしゃれ」と見なされる。

 

流行に乗る人の心理だってそう。

周りからおしゃれな人だと思われたいがゆえに最先端を行くのではないでしょうか。

 

飽和しきった業界で、「最先端の流行」が生まれない今だからこそ盛り上がりを見せているノームコア。

もちろん人の影響やその時代の背景に影響を受けて生まれる「流行」が完全になくなるとは思えません。

 

しかしこのまま業界が飽和したままで、そこに楽しみを見いだせず原点回帰を始める人が増えたなら。

ノームコアなファッションを好んで極め、他人の目を気にせずファッションを楽しむ人が増えたなら。

 

今は「流行派」の人口が大多数ですが、少子高齢化の影響もあってそれを「ノームコア派」が追い越す日が来たら。

パリや東京からコレクションが消える日もそう遠くはないかもしれませんね。

 

・・・なんてことを想像してしまうくらい、今のファッション業界は窮地に立たされているのかもしれませんね。

The following two tabs change content below.
いわた (岩橋康太)

いわた (岩橋康太)

ブログの収入で生計を立てている洋服オタクな22歳。大学3年生の夏、ブログを始めると決心するもパソコンを持っていない状況からスタート。いくつかのゼロから這い上がった自身の経験をもとに、多くの人に「誰でも何でもやればできる」を伝えることが目標です。
詳しいプロフィールはこちら
いわたのTwitterをフォローする
お問い合わせはこちら

もう1記事読んでいきませんか?

いわたが着なくなった服と想い、ネットで売ってます

オンライン通販サイト「iwatashop」では、いわたが着なくなった服を販売中。

商品は随時追加しています。